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2/4舞台「孤島の鬼-咲きにほふ花は炎のやうに-」

 

最初に。

まだ舞台を観ていない方は読まないことをお勧めします。

原作こそ江戸川乱歩の「孤島の鬼」ですが、たぶん読んだ方でも舞台は一味違うと思います。

 

あとめっちゃ感想文です。まさに感想文。書いていて学生の頃の宿題を思い出しました。

 

まだ来週までチケットありますので、どうぞ公式から

www.nelke.co.jp

 

 

一人でどこへでも行く私でも正直一人で観劇は堪えた。

それぐらい衝撃のある作品でした。

どれくらい一人で行くかっていうと焼肉も温泉も舞浜へも一人で行くくらいです。

参考にはならないかもしれませんが、それを前置きに。

 

昨年発表され、キャスト一覧をみて驚きました。

テニミュをライフワークにしているので、3rd seasonで大石役を演じていた石田くん、乾役を演じていた田中くん。

そして、1st seasonで初代日吉役を演じていた河合さんと、財前役を演じていた佐藤さん、5代目カチロー役でちっちゃな英雄で再会した平井くん。

そのほかにも、色々な舞台で観ていた星乃くん、舞台おそ松さんでのトト子ちゃん役がすばらしくってびっくりした酒井さん。はじめて観る、文さん。

これはなんて魅力的なキャスト陣だろうと思いました。

 

特に河合龍之介さんは、私を舞台観劇にのめりこませたといってもいいほどの方で。

きっかけはミュージカルテニスの王子様で、もう初めて観たときから10年経っていることに驚きながら、今も舞台や芝居の世界で活躍されていて。

「D坂の殺人事件」で江戸川乱歩作品に携わっていたことや、彼自身の魂を削るような演技はきっと今回どんな役でも光るものがあるんだろうとずっと楽しみにしていました。

 

あと、私は孤島の鬼未読です。江戸川乱歩もあまり読みません。これをきっかけに読もうかなと思います。

配役

私こと箕浦(佐藤)、箕浦(石田)、諸戸(田中)

初代・秀(酒井)、友之助・吉(星乃)

北川刑事(平井)、深山木・助八(文)

諸戸丈五郎(河合)

 

あらすじ(きちんとしたのは公式を)

 私こと箕浦(佐藤・石田)は、三十にも満たないというのにその容姿は白髪であった。

 黒髪が全て真っ白になった一晩の話を、訥々と語り始める。

 全てはどこからだったのだろうか。学生時代に同性の諸戸(田中)に愛を寄せられていたことだろうか。最愛の恋人初代(酒井)が殺されたことからだろうか。

 初代の自宅の鍵は全てかけられて密室殺人のようだと北川刑事(平井)は言う。初代と恋を育んでいた時に同性しか愛せないはずの諸戸が邪魔をしてきたことから、箕浦は諸戸が自分に気持ちを向かせたいがために初代を殺したのではないかと、探偵である深山木(文)に調査を依頼するーー

 

そんな感じからはじまる舞台です。

以下感想。

 

ひとつひとつの糸を手繰り寄せて、中盤から終わりまでぐっと引き寄せられる。

「私は不幸という言葉を知らないのです」でしたか。

彼らが見た景色も。彼らが会ってきた人物も。

 

 諸戸の愛がすごい。孤島の鬼の「この世界」で異質であるということを表現するために、田中くんの身体的特徴がいかんなく発揮されたしそれすべてが魅力だった。諸戸は箕浦に対して学生時代からずっと想いを寄せ続け、諦めることをしなかった。婚約を交わし親のいない初代と恋を育む箕浦から初代を奪いたいがためにわざと初代に求婚するその心情はどれほどだったのだろうか。正直いわゆる「普通のレンアイ」においても同じような状況になったら諦めてしまいそうなのに、諸戸は諦めずにどうにかして箕浦に振り向いてもらおうと必死だ。それに気付いていながらも悦に入り、気持ちを利用し続ける箕浦がどれほど人間としてなっていないか……とすら思うあまり、石田くんと佐藤くんにいらいらしてしまった。笑

 初代が殺され、それまで初代に求婚していた諸戸を箕浦は疑いながらも友人である探偵・深山木に調査を依頼する。婚約の際に指輪の代わりに初代からもらった系譜図を深山木に渡し、深山木は箕浦の心のうちを見抜きながらも調査のために東京を離れる。そして情報が手に入ったけれど容易には伝えられない、書留で箕浦の自宅に送ったから見てくれ、殺害予告がきたと見晴らしのいい海辺で予告された日をやり過ごしたいと言われるも、白昼堂々と深山木は惨殺される。このときの深山木と箕浦の絡みが、何かすごく色っぽかった。諸戸が箕浦に向ける情とは別で、深山木はすべてのひとに愛を与える人であった。

 絶望のさなか諸戸に会い、諸戸は箕浦に振り向いてもらい一心で二人は真相を追求するためついに諸戸の故郷へとたどり着く。

 ここからはもう役者の皆さんが持つ世界観に呑みこまれて正直ぼんやりとした記憶しかないです。笑

 

 この世の不幸とは何なのか。人はどうして鬼になるのか。鬼とはなんなのか。

 諸戸の父、丈五郎の生まれもその歩んできた道も。鬼にならざるを得なかったのか、果たして彼は鬼だったのか。

 初代の死の理由、下手人とその首謀者であった丈五郎を突き止めた二人は土蔵に押し込められていた作られた双生児である秀・吉の二人を救い出し、丈五郎を閉じ込める。

 ここで、舞台の最初に『私』が語った「私は不幸という言葉を知らないのです」と言ったのが秀ちゃんだとわかる。秀ちゃんはたいそう綺麗な女性で、箕浦はたとえ傍らに吉がいると知っても秀ちゃんに心を奪われる。諸戸はここでも救われない。そして諸戸の島に隠された財宝を探すために、箕浦と諸戸は二人洞窟へ行く。潮が満ちて洞窟の中の水位があがり生命の危機にさらされた二人は、ここで究極の分かれ道を歩むことになる。

 箕浦は生きるべく生きたいと願い、諸戸は死に向かい黄泉への道を願う。

 諸戸はここで死ぬのなら箕浦とともに死にたい。想いを吐露し、添い遂げたい。箕浦は出て初代の妹だった秀ちゃんと生きたいと願う。それは互いに譲れない思いなのかなと思いました。ただ、助けが来てしまう。諸戸は、全て諦めたんでしょう。

 洞窟を出て、真っ白になった箕浦の髪。箕浦は恐怖というものを諸戸の愛で知ったのでしょうか。ここから、箕浦は佐藤さん、私は石田くんが主に演じるようになります。

 そして、洞窟を出た後の登場人物のその後。諸戸には実の親が生きていることが知らされる。秀ちゃんは繋がされていた吉と手術によって元通り一人となって、箕浦と結ばれる。文字にすると淡々としたもので。

 ある日。諸戸の死亡通知が届くのです。本当の父親からの手紙では、最後まで箕浦の名を呼びながら亡くなったと。ぞっとしました。そのときの田中くんの演技が。ただ箕浦を見ている諸戸。この世のものではない諸戸。

 そして箕浦は言うのです。

「この病院の院長をやってもらいたかった」と。

 誰が、長年想いを寄せ続けた相手が結婚して営業している病院の院長をやりたいと思うのだろうか。

 誰が鬼かと言われると、箕浦ではないだろうかとすら思うほど。

 ただ。生きたい、生き抜くべき箕浦の物語でもあるが故に、鬼とは言えない。

 じゃあ諸戸だろうか、丈五郎だろうか、初代だろうか。

ああ、私は鬼というものを人間の念と思っています。

 

 

終わった後、気付いたら赤坂レッドシアターを出て電車に乗っていました。

ずっと頭がぼんやりとしていて、改札を通った記憶がないんです。本当に。

何がすごかったんだろう。全部すごかったんです。

 

河合さんの命を削るかのような演技。

そうとしか言えない自分が憎いくらい、すばらしい演技でした。彼の鬼気迫る演技は本当に観てよかったと思っています。

魔界で上皇を演じていた時もそうでした。

人は簡単に鬼になる。

 

あのときの赤坂レッドシアターは地獄だった。